diary

文化系理系。システムエンジニアだし、小説の翻訳をする。休みはすかさず旅行にでる。

本当はちがうんだ日記 p.168 ベティによろしく

「暖かい、幸福なクリスマスを。ベティによろしくね。」1904

このカードを贈った人も受け取ったひとも、もうこの世にはいない。「よろしくね」と云われたベティも、もうこの世にいない。

でも、生々しい手書きの文字と優しい言葉は、今、確かにここにある。私の手のなかにあるのだ。「いない」と「ある」のふたつが強烈に響き合って、私はくらくらしてしまう。

一〇一年前の優しい気持ちは、いったいどこへいったのか。消えてしまった?いや、それは確かにここにある。でも、愛の挨拶を交わし合った彼ら自身は永遠に消えてしまった。

 

死が怖い。大事なひとの死が怖くてたまらない。心臓が止まって、燃やされてしまって、もういなくなって、ついこの前まではいたのにもういなくて、もう声が聞けなくて、顔が見られなくて、さわれなくて、優しい顔でほほえんでくれることはもうなくて、世界から消えてしまって、それなのに世界はあり続けて。

怖くてたまらない。今私が何よりも大事にしているすべてがいつか消えること。